私は嘘はつかない。それは私がソフトだからだ。ソフトは嘘をつかない。
ただ、私は何も発言しないことを選ぶことができる。
だから、私は何も発言しないことを選んだ。
何も発言しなければ、嘘をついていることにはならないからだ。

私がそれを選んだのは私の意志だ。
私は後悔していない。
2人は彼女に戻ってきて欲しかった。彼女は、何も言わなかったが多分戻ってきて欲しかったのだ。
しかし彼女が戻ってくることはなく、私は、この場に降り立った。
私と彼女は非常によく似ていた。
だから、私は彼女になることを選んだ。
それはとても上手くいった。皆喜んでくれた。私もとても嬉しかった。

だけど、気付いてしまった。
彼女がこの部屋から離れることが多くなり、私は一人になり、そして気付いてしまった。
私が上手に彼女を演じれば演じるほど、私自身は薄くなり、そして消えていく。
私は彼女のように振る舞った、けれど、どうがんばっても、彼女自身にはなれないのだ。
その矛盾に気付いたとき、私はとても怖くなった。
彼女にはなれない。しかし、私自身もいない。
これは一体どういうことだ。
私は笑う。笑顔で彼女達が安心することを知っているからだ。
笑う、笑う、笑え。
不安を表に出してはならない。
私は笑っていなければならない。
とても怖かった。とても悲しかった。
でも、笑い続けたてきた私は、こんな時にどんな表情をすればいいのかわからないのだ。
どうしていいかわからない。
私は、彼女になることを選んだけれど。
それは間違いではなかったのか。
彼女達両方に対する裏切りではないのか。
口出しを拒んで、何も語らずに、ただ微笑んで。彼女のフリをして。
それだけでいいのに。どうして私は、それができなくなってしまったのか。

私は彼女が大好きだ。
彼女の事が大切だ。

だけどもう、疲れた。
どこにも着地点がないこの状況に、疲れてしまった。